香川大学医学部附属病院 救命救急センターのホームページへようこそ
令和7年4月に香川大学救急災害学講座教授を拝命いたしました河北賢哉と申します。我々の教室のルーツは、昭和58年に小栗顕二教授が開講された麻酔・救急医学講座に遡ります。この時代は、救急医、麻酔科医、集中治療医が救急外来、手術室、手中治療室を行き来しながら多種多様な診療を実践されていました。平成12年に前川信博教授が就任され、翌年には救命救急センターが設置されました。その後、平成16年に黒田泰弘先生と私が救命救急センターに赴任し、この頃から救急医は救命救急センター、麻酔科医は手術室が活躍する舞台へと少しずつ変化していきました。あらゆる診療科にあてはまる細分化の流れに乗り、平成20年に麻酔救急医学講座が救急災害学講座と麻酔学講座に再編されました。翌年の平成21年に黒田泰弘教授が救急災害学講座の初代教授に就任され、ここから我々の教室がスタートしました。心停止後症候群を中心とした重症脳障害患者に対する神経集中治療を展開しながら、3次救急医療を実践してきました。その間に、平成23年の東日本大震災、平成30年の西日本豪雨、令和6年の能登半島地震に対し、DMATを派遣し、災害支援活動を行いました。そして令和7年4月に黒田教授から私へ教室運営がバトンタッチされました。

2025年9月8日
香川大学医学部救急災害医学教授/
救命救急センター長 河北賢哉
災害医療にはCSCATTTという重要なキーワードがあります。最初のCはCommand & Control、二つ目のCはCommunicationです。救急医療はこの二つのCを実践することで成り立つものであると考えられます。チームリーダーが全体を俯瞰し、スタッフに的確な指示を出し、院内のあらゆる診療科、診療部門とうまく連携しなければ重症患者の救命はできません。救急医には、救急医としての知識や技術(テクニカルスキル)を備えておくことはもちろんですが、あらゆる職種とのコミュニケーション能力(ノンテクニカルスキル)も重要です。この両方のスキルをバランスよく兼ね備えているのが救急科専門医であると私は考えます。香川県は全国と比較し、救急科専門医が不足しています。少なくとも香川県にはあと10人の救急科専門医が必要と考えています。二次医療圏にその専門医を適正に配置することにより、救急医療の要となり、それぞれの病院で研修医や専攻医に対する救急医療教育を行うことにより、その地域の救急医療の底上げが可能となります。これを実現するためには、医学部における教育、特に医学生教育が重要となります。低学年から我々指導医が学生と関わり救急医の魅力を伝え、高学年では臨床参加型の実習を行い、チーム医療の一員を担ってもらいます。地域医療を支える意識を学生の間から芽生えさせ、香川に根差した救急医療ができる人材育成を目指します。
今、全国的に救急搬送件数の増加に伴い、救急車の現場滞在時間や搬送困難事案が増加しています。香川県も例外ではなく令和4年から搬送困難事案が急増しており、香川の救急医療は逼迫していると言えます。救急医療を必要とする傷病者に適切な医療を提供するために、香川県MC(メディカルコントロール)協議会で協議を重ね、令和7年度、香川県の事業として初期救急医療体制強化および救急医療機関連携体制構築事業が実施されます。この事業は、軽症・中等症の救急患者を一次医療機関に担ってもらい、二次・三次医療機関は一次医療機関をしっかりと支えていく体制を構築することが目的であります。オール香川で救急医療を護っていくことが求められています。我々救命救急センターは救急医療の“最後の砦”として、各医療機関や消防機関に対して安心・安全な存在であり、信頼していただける“最後の砦”でなければならないと強く感じています。そのためには救急医の育成が喫緊の課題です。まだ救急災害医学教室としては小さく、少数精鋭での診療、教育、研究が始まったばかりです。救急医を志す医学生は思いのほか多く、香川での救急医療を行う魅力を存分に伝え、教室を大きくしていきます。今後の進路に迷っている香川大学出身の救急医の先生方にはこの場をお借りしてお伝えしたいと思います。「我々と共に成長し、香川大学救急のsecond stageを一緒に創りませんか。扉を大きく開き待っています。」
救命救急センターにおける救急医療だけではなく、香川県立中央病院と連携した香川県ドクターヘリ事業、病院前救急医療体制、大規模災害対策においても県や各医療機関、消防機関と連携し、より良い救急医療・災害医療体制を構築し、香川の未来を護っていきます。
香川県の各医療機関、行政機関ならびに各消防機関のみなさまにおかれましては、今後とも変わらぬご指導とご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。

2025年9月8日
香川大学医学部救急災害医学教授/
救命救急センター長 河北賢哉